賃貸住宅では、賃借人は退去の際に、部屋を原状(入居前の状態)に回復して賃貸人(所有者)に返却する義務を負います。
2020年4月1日に施行された改正民法で、通常損耗や経年変化について賃借人は原状回復義務を負わないことが明記されました。
つまり、それ以前は慣習的に行われていた原状回復費用の負担範囲について、賃借人の原状回復義務は引渡し後に生じた損傷についてのみと法的に決められたのです。
では、どこまでが「通常損耗・経年変化」であり、どこまでが「損傷」にあたるのでしょうか。
「通常損耗・経年変化」は、通常考えられる範囲で部屋を使用した場合に生じると予想される劣化です。例えばクロスや畳の日焼け、家具の設置跡、テレビなどの大型電気製品が置かれた後部壁面に生じる黒ずみ等、が該当します。
なお、ペットがつけた柱のキズ等は、ペット可物件でも通常損耗・経年変化に当たらないとされます。
また、タバコのヤニによる汚れや臭いも、「通常考えられる範囲」に含まれません。タバコの汚れや臭いも原状回復義務の対象になるという判断であり、喫煙者に厳しい風潮が表れています。